角膜AI研究報告
- 日本角膜学会,国立情報学研究所(NII),名古屋大学情報学部による共同研究
- 人工知能(AI)によって前眼部カラー写真を正常および角膜・前眼部疾患に分類するプログラムを開発
【データ提供機関】日本角膜学会関連18施設
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愛媛大学,金沢大学,北里大学,京都府立医科大学,杏林大学,近畿大学,慶應義塾大学,国際医療福祉大学三田病院,順天堂大学,筑波大学,東京歯科大学市川病院,東京女子医科大学,東邦大学大森病院,鳥取大学,広島大学,福岡大学,宮田眼科病院,和歌山県立医科大学
【対象疾患】
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正常
感染性角膜浸潤
非感染性角膜浸潤
角膜瘢痕
腫瘍性病変
角膜沈着・ジストロフィ
急性緑内障発作
水晶体混濁
水疱性角膜症
【教師データ】前眼部カラー写真(ディフューザ法)5,270枚 ※1症例1枚の画像を使用
→物体認識モデルYOLOv5を使用して教師データを学習し,AI自動分類プログラムを作製した.
【検証データ①】前眼部カラー写真(ディフューザ法) 500枚 ※教師データとは異なる症例
→学習済みプログラムおよび眼科医による読影を行い,結果を比較した.
Ueno Y, et al. Deep learning model for extensive smartphone-based diagnosis and triage of cataracts and multiple corneal diseases. Br J Ophthalmol 2024:bjo-2023-324488. doi: 10.1136/bjo-2023-324488. Epub ahead of print.
【AI(学習済みYOLO v5)による画像解析例:細隙灯顕微鏡,ディフューザ写真】
※Supplementary Materials(Fig.S5)を改変
開発したAIプログラムは画像を読影し,各分類名の尤度(予測スコア)を付与する.赤矢頭で示したような小さな病変であっても認識し,高精度で検出することが出来た.
青字:画像の臨床診断名
赤字:AIの解析結果(分類名と尤度)
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AIおよび眼科医2名の正誤を表す混同行列チャートを示した.対角線上のセルが濃い色であるほど高い陽性的中率を反映しており,AIは誤答が少ない一方,眼科専攻医(Resident)は誤答が多かったことが分かる.500枚全体の陽性的中率はAIが88.8%であり,角膜専門医の平均(82.7%)や眼科専攻医の平均(79.5%)より高かった.
【検証データ②】スマートフォン写真 336枚 ※アップル社 iPhone 13Pro,マクロ撮影,アタッチメント無し
→細隙灯顕微鏡によるディフューザ写真を学習済みのYOLO v5で解析した.
スマートフォンのマクロ撮影を用いることで,高画質な前眼部カラー写真を取得可能である.細隙灯顕微鏡で学習したAIを用いて分類すると,学習データの違いにより陽性的中率は低下したが,AI分類の尤度に閾値を設けることで陽性的中率は向上した.尤度が98%以上の画像に限定すると陽性的中率91.7%となり,細隙灯顕微鏡ディフューザ写真と同等の精度である.9分類を緊急度別に4つに分けて解析し,スマートフォン写真をAI自動分類することで高精度のトリアージに利用可能であると示された.