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羊膜移植に関する緊急連絡、羊膜移植術に関する重要なお知らせ

平成26年4月7日

日本眼科学会会員各位

羊膜移植術の保険収載に関わる緊急連絡

  日本眼科学会 理事長 石橋 達郎
  日本角膜学会 理事長 西田 幸二
  日本角膜移植学会 理事長 天野 史郎

謹啓

先生方におかれましてはますます御健勝のこととお慶び申し上げます。

さて、2014年4月1日より羊膜移植術が保険収載されることが決定されました。それに伴い、可及的速やかに、羊膜移植の安全な実施に向けての体制を整えることが厚生労働省より求められています。WHOによると羊膜は「組織」として位置づけられており、その取り扱いは法律に従って行われなければなりませんが、「臓器」とは異なり、「組織」の取り扱いに関わる法律は本邦では制定されておりません。したがって、すでに「組織」として位置づけられ、それを用いた手術が保険収載されている「同種骨」、「同種皮膚」、「同種心臓弁」に準拠し、日本組織移植学会のガイドラインを遵守する中で羊膜移植を実施していくこととなります。現在、日本組織移植学会、日本角膜学会、日本角膜移植学会の3学会で、羊膜取扱いガイドラインの改訂、羊膜移植術のガイドラインの作成など、羊膜移植術の保険収載への準備・対応を急ピッチで進めておりますが、現場での混乱を極力避けるために、これまでの経緯と今後の方向性につきまして、下記のとおりご報告いたします。保険医療に基づいて、これまでとは異なる手続きや体制整備などへの対応が求められます。関係の先生方にはご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

前述のように、組織移植については、日本組織移植学会の認定組織バンクを通じてガイドラインを遵守することが保険医療養担当規則の中で規定されており、羊膜移植についてもこのルールが当てはまることになります。これを受け、3月7日に開催された日本組織移植学会理事会において、日本組織移植学会、日本角膜学会そして日本角膜移植学会の三者間で基本合意された事項を以下に記します。

  1. 羊膜を取り扱う施設の要件

    先進医療として行われてきた羊膜移植が平成26 年4 月1 日より保険収載されるにあたり、羊膜移植の安全な実施に向けての体制を日本角膜学会、日本角膜移植学会、日本組織移植学会により定める。

    • 1)羊膜を取り扱う施設として、羊膜バンク(カテゴリーⅠ)および羊膜取り扱い施設(カテゴリーⅡ)の二種類の施設を定める。これらの施設では羊膜を採取、保存し、その羊膜を自施設での羊膜移植術に使用することができる。
    • 2)羊膜バンク(カテゴリーⅠ)は日本組織移植学会が認定した組織バンクで、日本組織移植学会ガイドラインおよび日本角膜学会が作成した羊膜取扱いガイドラインを遵守して羊膜をプロセスし、自施設のみならず他施設にも羊膜を斡旋することが出来る。認定には日本組織移植学会のサイトビジットによる監査・認定(TB認定: Tissue Bank)を受けなければならない。
    • 3)羊膜取り扱い施設(カテゴリーⅡ)は日本組織移植学会が認定した組織取扱い施設で、日本組織移植学会ガイドラインおよび日本角膜学会が作成した羊膜取扱いガイドラインならびに羊膜移植ガイドラインを遵守して羊膜をプロセスし、自施設のみで羊膜を採取、保存、利用することが出来る。認定には日本組織移植学会のサイトビジットによる監査・認定(カテゴリーII認定)を受けなければならない。

      申請は下記の手順に従って行う。(1)日本組織移植学会が定めたカテゴリーⅡ申請書に加えて、日本角膜学会と日本角膜移植学会が定めた要件を施行することを定めた申請書をつけて日本角膜学会に申請する、(2)日本角膜学会が書類を確認し、日本組織移植学会に推薦する、(3)日本組織移植学会が監査する。

    • 4)選定された羊膜取り扱い施設は羊膜取扱いガイドラインならびに羊膜移植ガイドラインを遵守することを確約しなければならない。羊膜取扱いガイドラインの中で、遵守すべき要件の骨子は以下のとおりである。
      • ①羊膜ドナーは待機的に帝王切開を受ける妊婦とする。
      • ②出産予定日前の3ヶ月以内に血液採取による感染症チェックと問診を行い、感染症を否定すること。チェック項目は、HBV、HCV、HIV、HTLV-1、梅毒とする。
      • ③ウインドウピリオドを考慮し、出産後およそ60-90日のあいだで血液採取による感染症の再チェックを行うこと。ドナーはいずれの検査も陰性である。
      • ④採取時の羊膜の一部と細切後1ヶ月冷凍保存した後の羊膜に対し微生物検査を行い、陰性であることを確認する。
      • ⑤冷凍保存は-80C以下の臨床用に準備した冷凍庫内とする。
      • ⑥羊膜にはロット番号を付し、ドナー羊膜と使用した患者情報が連結できるようにし、文書で保管する。羊膜の保存は採取から2年以内とし、ウインドウピリオドを考慮した採血(2回目)結果の後に使用する。
      • ⑦羊膜バンクは日本組織移植学会と日本角膜学会に斡旋した羊膜数を毎年報告すること、また、羊膜取扱い施設は使用数を角膜学会に毎年報告し、角膜学会はこのデータを纏めて日本組織移植学会に報告する。
      • ⑧自施設内に産婦人科を有する。
      • なお、現在、先進医療を含め自施設でプロセスした羊膜を使用している施設において、4月以降、自施設で羊膜を調達し使用する場合は、羊膜バンク(カテゴリーⅠ)もしくは羊膜取扱い施設(カテゴリーⅡ)の申請を日本角膜学会に行い、日本組織移植学会より認定を受けてください。もしも要件を満たすことが難しい場合には、羊膜バンクから羊膜の供給を受けて羊膜移植を実施していただくことになります。羊膜バンクは、現在、京都府立医大組織バンクのみですが、今後、数施設に増える見込みです。

  2. 羊膜移植を実施する施設・術者の要件

    詳細は今後作成される羊膜移植術のガイドラインに定めますが、その骨子は以下のとおりです。また、本項は暫定期間においても適応されます。

    • 1)羊膜移植実施施設は、自施設で採取した羊膜を自施設で使用できる羊膜バンクまたは羊膜取扱い施設と羊膜バンクから供給された羊膜を移植手術に使用する羊膜移植施設に分けられる。保険請求の際には、前者では施設IDと各羊膜のロット番号を記入してレセプト申請、後者ではシッピング元の羊膜バンクとの間で採取・保存料を支払う契約を行った上で、シッピング元の羊膜バンクのIDとそのロット番号を記載してレセプト申請することとなる。
    • 2)実施施設基準(今回の保険改定の文章から引用)
      • ①羊膜移植の術者または助手の経験を6例以上有する常勤医が少なくとも1名以上配置されている。
      • ②術者は眼科の経験を5年以上有する。
      • ③術者を含めて常勤の眼科医が3名以上いる。
      • ④日本組織移植学会の定めるガイドライン等を含め、関連学会が定める基準を遵守する確約書を提出している。
    • 3)術者の要件
      • ①眼科の経験を5年以上有する。
      • ②羊膜移植の術者または助手の経験を6例以上有する。
      • ③羊膜取扱いガイドラインおよび羊膜移植ガイドラインの内容を遵守して羊膜移植を行う。
      • ④日本眼科学会主催の講習会(年2回開催予定)を受講する。ただし、本年度は第2回目の講習会(臨床眼科学会で開催予定)までは上記の①~④の要件を満たせば日本眼科学会への申請のみで仮承認とする。

今後、羊膜移植術のガイドラインを関係学会の理事等で構成する委員会で作成していきます。委員会のメンバーは、日本眼科学会理事・日本角膜学会理事長の西田幸二、日本眼科学会理事・日本角膜移植学会理事長の天野史郎、日本眼科学会理事・日本角膜学会理事の木下茂、日本眼科学会常務理事・日本角膜学会理事の大橋裕一、日本角膜学会理事の澤充、日本組織移植学会理事の篠崎尚史、の6名です。

以上、何卒よろしくお願い申し上げます。


平成26年4月1日

日本眼科学会会員のみなさまへ

羊膜移植術に関する重要なお知らせ

謹啓、先生方には常日頃、日本眼科学会の運営に温かいご支援をいただき感謝致しております。さて、ご存知のようにかねて先進医療枠にありました羊膜移植術が来る4月より保険医療として承認されました。ただし、実施にあたっては、日本組織移植学会のガイドラインのもとでの厳正な運用が求められています。以下に概要をお示ししますが、詳細については角膜移植学会のホームページhttps://cornea2.syscom.dev/cms/ にアクセスの上、該当事項についてのお手続きをお願いいたします。

1)羊膜取扱い施設について

羊膜を取り扱うことのできる(プロセスできる)施設は、日本組織移植学会のガイドラインに基づいて定められた基準をクリアする必要があります。羊膜取扱いガイドラインの遵守が大前提ですが、基準に合致する施設におかれましてはホームページ内の関連資料をご精読いただいた上で、日本角膜学会までご申請いただきますようよろしくお願い申し上げます。

2)羊膜移植実施施設について

保険診療への導入に伴い、羊膜移植を実施できる施設が限定されます。同じくホームページ内の要項をご精読の上、該当する施設におかれましては所管の行政組織へ申請いただきますようお願い申し上げます。

3)羊膜移植術者講習会について

羊膜移植術を実施する医師にも一定の条件が要求されています。同じくホームページ内の要項をご一読の上、羊膜移植術の実施を予定されている先生におかれましては日本角膜学会が開催します講習会にご参加のほどよろしくお願い申し上げます。

謹白

  日本角膜学会
  羊膜移植に関する委員会

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