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翼状片手術

翼状片手術は再発率が高いことより、現在まで種々の方法が開発され、100種類以上の方法がある。

翼状片の頭部を輪部で切開し、頭部を角膜から剥離除去後、強膜の結膜欠損部を有茎弁移植または無茎弁移植する術式が主流であると思われるが、近年においても、輪部結膜移植術(無茎弁移植)、低濃度マイトマイシンC術後点眼、Keratoepithelioplasty、マイトマイシンC術中装付、羊膜移植術、羊膜移植術+輪部移植術等の新しい方法が開発されて来ている。

しかしながら、再発率は1.0%~30%と報告により差がある。特に再発例では初発例に比較し、再発率は高い。また若年者は再発する事が多い。
以下に翼状片の治療法の概略を示す。

1) 頭部の処理

翼状片の頭部は輪部で切開する方法が主であるが、その他に、そのまま角膜より剥離し結膜下で強膜に縫合する方法や、反転して鼻側に縫合する方法等がある。

2) 結膜欠損部の処理

翼状片の頭部を輪部で切開し、頭部を除去後、強膜部を露出したまま結膜断端部を強膜に縫合する、いわゆるBare Sclera法は再発率が高く、30~80%と報告されており推奨できない。
その為結膜欠損部を埋める方法として有茎弁移植術、無茎弁移植術、羊膜移植術、Keratoepithelioplasty、口唇粘膜移植術がある。

a) 有茎弁移植術

翼状片手術で主に用いられている術式である。

切開線のデザインによりCzormaic法、Beard法、浅野法、江口変法、高木法、原法、登坂法、Aruga法、大西法、河本法等がある。

無茎弁移植に対し、有茎弁移植の利点は、血流が保たれている為、強膜との創傷治癒が早く、再発が起こり難い点である。

縫合線が輪部(鼻側翼状片であれば、右眼なら3:00、左眼なら9:00)に垂直になると再発が多い(図1)

pic_2_08_01.png

b) 無茎弁移植術

患眼の上方、耳側、あるいは他眼の上方より、必要に応じたsizeの結膜片を採り、欠損部に縫合する術式である。

健常な結膜を必要なsizeに合わせ、任意の場所から採取できる利点はあるが、血流再開までに5~7日を要する為、強膜面との創傷治癒が遅く、再発例では再発する可能性がある。

c) 羊膜移植術

1997年頃より結膜欠損部を羊膜で被覆する術式が新たに開発された。再発率は5~15%と高い。

d) 角膜表層移植術、Epikeratophakia

表層角膜を結膜欠損部の強膜上に縫合する術式であるが、rejectionが起きると再発することが多い。また、角膜の入手が困難なこともあり、近年はあまり用いられていない。

e) 口唇粘膜移植術

口唇粘膜を欠損部に用いる術式であるが、球結膜内に永く赤みを残す為、美容的な点で患者に好まれず、少数の報告があるのみである。

3) その他の方法

a) わたぬき法

翼状片部結膜下組織(結膜上皮層と内直筋との間の結合織)を切除する方法である。
翼状片の再発は断端部結膜の実質中の繊維芽細胞が活性化されて増殖する為に起こると推測されている。結膜下の組織を完全に取り除くことは困難であることにより、切除により逆に残った組織の繊維芽細胞が刺激される可能性があるため、術式の真の効果は不明である。

b) 結膜下移植法

翼状片の頭部を角膜から剥離し、結膜下の剥離した贄片の頭部を結膜下で上方あるいは下方に90°曲げるようにして強膜に縫合するか、あるいは2分して上方、下方の強膜に縫合する方法である。

結膜を切除しない為、結膜実質の繊維芽細胞への刺激が最小限に抑えられ、再発が少ない術式である。

ただ、結膜下の赤みが永く存在する為、美容的な点で劣る。

c) 翼状片を有茎移植する方法

剥離した翼状片をそのまま下方、あるいは上方に転移して結膜上に縫合する術式であるが、近年の報告は無い。

4) 薬物療法

翼状片の進行を止める薬物は無いが、慢性の角膜周辺部潰瘍に伴い続発性に生じた翼状片では、角膜内への侵入が軽度であればステロイド点眼で消退することがある。

0.02%~0.04%のマイトマイシンCの点眼(1990年)、あるいは術中、露出強膜への塗布(1995年)が用いられて来ている。

再発性翼状片には有効であるが、完全に再発を阻止出来る訳ではない。

5) β線照射法

以前、露出した強膜にβ線の照射が行われていたが、効果が著明でないことや、ストロンチウムの器具の管理が煩雑なことより、最近ではほとんど使用されていない。

まとめ

翼状片手術は再発の多い疾患である。特に再発例は初発例に比較し、再発率が高い。

外眼手術であり、また、短時間で手術が終わることもあり、簡単な手術と認識し、また己の術式に自信を持つ術者は多いが、再発して他院を訪れる症例は多い。

故に、適切な時期に、適切な術式を用いて、慎重に手術を行うことが大切である。


文献

  1. 大橋 孝平:大橋眼科手術書 P249-258 南江堂 1967
  2. 山口 達夫:改良した結膜有茎弁移植術とHost結膜断端部反転縫合法を併用した翼状片手術の術後成績
    あたらしい眼科22:511-519. 2005

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