日本角膜学会から眼科医以外の医師へのお知らせ
被災地における角結膜疾患(目の表面の病気)への対応について
この度の東日本大震災で被災された多くの方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地においてはこれまで受けてこられた眼科診療を受けることができず、不安に思われている患者さんが多くいらっしゃることと思います。また被災地においては異物が目に入ったり目に怪我をしたりといった目の表面の病気を起こしやすい状態にあるのではないかと思います。しかし、被災地においては、こうした角結膜疾患の診療を眼科以外の医師が担当せざるを得ない状況も多いと考えられます。そこで、日本角膜学会では、眼科以外の医師向けに、被災地での角結膜疾患への対応の仕方について必要な情報をまとめました。今後、逐次必要な情報を更新してまいります。皆様の一日も早い復興をお祈りしております。
1.目の表面の外傷の場合
色々なものが目に当たって表面に傷ができてしまうことがあります。傷ができただけであれば多くの場合、2-3日で痛みや充血はなくなり自然に治ります。しかし傷に細菌等が入ると角膜潰瘍(黒目の中の白い点状の塊)ができ、放置しておくと角膜が解けて最終的に失明してしまう場合もあります。角膜潰瘍が疑われる場合は、抗菌薬点眼を2-3種類組み合わせて点眼します。原因菌が同定できない場合は、ニューキノロン系(クラビット、ガチフロ等)、ベータラクタム系(ベストロン)、アミノグリコシド系(トブラシン、ゲンタシン等)から使用可能な点眼薬を組み合わせて、1日4-6回点眼するようにします。2-3日点眼しても眼痛、異物感、充血がどんどん悪化していくようであれば、真菌感染や使用点眼薬に耐性の細菌感染が考えられます。こうした場合は、眼科医師に相談してください。
2.目に異物が入った場合
目に粉塵等の異物が入った場合、通常はまばたきをするうちに涙と共に皮膚などに排出されます。眼痛や異物感が続かないようであれば、そのままで様子を見て大丈夫です。しかし、上瞼の裏側に異物が入ってしまうと、そこから動かなくなり、まばたきのたびに角膜(黒目の表面)を擦って傷をつけます。異物が留まるかぎり眼痛、異物感、充血などの症状が続きます。こうした場合は瞼を裏返して異物を除去する必要がありますので、眼科医に相談してください。また異物が外に出た場合も、異物が入った時に黒目に傷をつけている場合があります。眼痛、異物感、充血がどんどん悪化するようであれば、眼科医師に相談してください。
3.点眼治療中の場合
ドライアイ、アレルギー性結膜炎、角膜炎など種々の眼表面の病気で点眼薬の治療を受けてきた方の場合、それほどあわてる必要はありません。ただ、点眼薬をしなくなってしばらくするうちに、以前と同じ症状が出てくる場合は、点眼薬を再開する必要があります。眼科医師に相談してください。
4.角膜移植後の場合
角膜移植後の方は、多くの場合、術後の拒絶反応を予防するためのステロイド点眼と細菌感染を予防するための抗菌薬点眼を行なっています。ステロイド点眼薬としてはリンデロン、フルメトロン、サンテゾーン、オドメール、フルオメソロンといった名前の点眼薬があります。これまで使用してきたステロイド点眼薬を急に中止した場合、拒絶反応が起きてくることがあります。拒絶反応を起こさないために、これまで使用してきたステロイド点眼薬をできるだけ中断しないように指示してください。拒絶反応が起きると、視力低下、充血などの症状が起きます。拒絶反応が起きても早めに治療を開始すれば元の状態に戻すことができます。移植をしていない方の目を隠して、移植後の目のみでの見え方をチェックするように指示してください。
5.コンタクレンズ使用中の場合
コンタクトレンズを使用中の方が注意すべきことについては、日本コンタクトレンズ学会からのお知らせが、日本眼科学会のホームページ(http://www.nichigan.or.jp/index.jsp)に掲載されていますので、参照してください。
6.点眼薬の種類について
点眼薬の外観、種類などについては、やはり日本眼科学会のホームページに参考資料が掲載されていますので、参照してください。